教えて!トリ博士

第8回 よい鶏づくり
3カ条
その2「よい餌」
後編

教えて!トリ博士
[第8回]  よい鶏づくり3カ条その2「よい餌」後編

前編に続き、今回は
安全飼料への道のりと、
日本赤鶏協会が考える
“赤鶏のよい餌”についてお話しします。

天然原料と合成製剤

現在の配合飼料について、原料すべてが農産物や海産物、つまり自然の産物が原料になっていると思っていませんか? 以前の配合飼料は、トウモロコシ、大豆ミール、魚粉、糟糠類といった天然原料からできていました。ところが約半世紀も前から、化学合成の製剤が添加されています。当時アメリカで、「ブロイラーの成長能力に対し配合飼料の栄養量が対応しておらず、アミノ酸量が不足している」との研究結果が発表され、化学合成のアミノ酸製剤の補給が必要との結論から世界で栄養補給のための合成製剤が多種多量に開発され、今日ではその添加が“当たり前”のこととなっているのです。

ただ、動物の生命や成長に必要な栄養とこれを支える自然の栄養素供給力とのバランスがくずれてしまったのか、鶏に疾病がみられるようになりました。体重を支える足が弱い、呼吸器症、心臓肥大など、要するに太りすぎであり、これが現代のアニマルウェルフェアの問題へと進行していったのです。

安全飼料への道

また一方で、1955年に始まる高度経済成長期の日本では、公害などもあり食の安全性が脅かされていました。高度成長期後半から日本の生協運動が急速に成長し、学校給食も発展して食事の質も向上、食の安全・安心への意識が高まり、抗生物質製剤、合成抗菌剤などの飼料添加物の問題が大きく取り上げられるようになりました。

そこで農林省(現農林水産省)が、1953年の「飼料の品質改善に関する法律」制定当時には含まれていなかった“安全性の確保”を取り上げ、1975年に「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(飼料安全法)」に改名、改正しました。

2001年、国内でも発見され大問題になったBSE(牛海綿状脳症)についてもお話ししておきましょう。発症は、BSEに感染した牛の脳や脊髄などを原料とした飼料が他の牛に与えられたことが原因と考えられており、すぐに“牛の脳や脊髄などの組織を家畜のえさに混ぜない”といった規制を設け、これを受けて2002年に飼料安全法が改正されました。全頭検査を経てBSEの発生自体が激減。BSEに感染した牛肉が商品として流通することを防ぐシステムは確立されています

よい餌とは何か

これまで配合飼料の問題点をいくつか取り上げてきましたが、添加物も農林水産省で使用承認を受けた製剤であり、問題が起きるたびに具体的な改定が加えられていて、飼料安全法で保護されている現在の飼料は安全。安全は「よい餌」の第一条件です。

経済動物の生産なので経済的な飼料も「よい餌」の条件となり得ますが、いまや飼料は国際商品、畜産物の需給とは関係なく、相場や作柄、天候の影響を受けるのは避けようのないことです。その中でも日本の飼料工場の近くで生産するなどの立地条件も、飼料の輸送費を抑える経済的工夫としては「よい餌」と言えるでしょう。

赤鶏の「よい餌」は、また違うものがあります。現代の雛は、ブロイラーにしろ赤鶏にしろ、それぞれ出荷日齢、出荷体重を決め、その達成に必要な飼料の質(配合内容)と量(摂取重量)をもとに育種されています。したがって、赤鶏にブロイラー用の飼料を与えることは栄養の無駄づかいになります。また、赤鶏は味の良さが育種目的に含まれていることが飼料づくりの重要な要素になります。成長曲線を守る飼料であることに加え、赤鶏は生産規模がブロイラー企業のように大規模でないことから小回りが利く利点を生かし、産地の原料事情に適する原料で自家配合を行うなど、独自の工夫が望まれます。つまり、鶏の健康にもよく味わいも引き立たせるオリジナル性の高い飼料が、日本赤鶏協会が考える赤鶏の「よい餌」です。

ところで、「よい餌」には、もう一つ条件があります。それは飼育環境です。飼育目的に沿った餌が「よい餌」ですが、そのよい餌の能力を十分に発揮するには「よい管理」が必要です。よい管理を徹底するには鶏舎一式の能力が深く関係してきます。次回は「よい管理」についてお話ししましょう。

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