教えて!トリ博士

第7回 よい鶏づくり
3カ条
その2「よい餌」
前編

教えて!トリ博士
[第7回]  よい鶏づくり3カ条その2「よい餌」前編

今回は、よい鶏づくりの 2カ条目

「よい餌」について、

配合飼料の素材のなりたち

お話しします。

飼料コトハジメ

畜産あるところに飼料あり。

畜産は、古代の壁画にもあるとおり、お肉や乳、毛、皮等を利用する「用畜」としては、ヤギや羊、牛などの草食動物を家畜としたことにはじまります(※)。飼料は天然の牧草で、今も飼料として大活躍している「アルファルファ」です。人間も「アルファルファもやし」を栄養価の高いヘルシー食材として食べていますよね。アルファルファはアラビア語al-fasfasah(最高の飼料)が語源と言われ、米国ではアルファルファ、別名のルーサン(昔は日本でもこの名で通っていた)は主に英国やオーストラリアで呼ばれていますが、由来はスイスのLuzern地域やイタリアの渓谷と考えられています。

※最古の家畜は、狩猟のパートナーとなったイヌと言われています。

このように大昔から世界各地で畜産に利用されてきた牧草のアルファルファは、今でもヤギや羊、牛や馬などに給与されており、鶏の健康飼育にも必須の原料です。

昔は肉用鶏飼料には必ず配合されていましたが、今はほとんど配合されていません。飼育日数が短縮されたからでしょう。

しかし、種鶏用飼料にはアルファルファが配合されています。種鶏は長期飼育が必要なのと、繁殖が関係しているからです。種鶏用に良質のアルファルファを給与すると、種卵の採取時期が延長できるほどの優れた成分を持っています。

配合飼料の主なカロリー源は?

世界の三大穀物は米、小麦、トウモロコシですね。その中でもトウモロコシは光合成の効率が高く最大の生産量を誇っています。ところで、もともとトウモロコシは今のような姿をしていたのでしょうか。とんでもありません。中米に自生する、祖先野生種とされている「テオシント」は、トウモロコシとはかなり異なっています。古代の人々が雑草の中から品種改良を重ね、収穫のたびに個体を選んでその種をまく「選抜」を重ねた結果、今日のようなトウモロコシになったと考えられています。鶏の改良と似ていますね。

コロンブスのアメリカ大陸発見後ヨーロッパ諸国に広がり、アジアには16世紀に、日本へはポルトガル人から伝わりました。

こうして世界に広がったトウモロコシは、飼料の主なカロリー源。多いものは飼料に60~70%ほども配合されています。

重要な栄養素、タンパク質の素は?

筋肉などの主成分、タンパク質は飼料の中でも欠かせない栄養素です。配合飼料のタンパク質は何からとっているのでしょう。

代表的なものは「大豆ミール」です。アメリカやブラジルは大豆の2大生産国ですが、それぞれの国内で食用として使われるのは1割もなく、油脂、燃料、飼料など食料以外で使われています。大豆油を抽出したあとの搾り粕、これが「大豆ミール」で、配合飼料の貴重なタンパク質源となっています。

アメリカが大豆の主要な生産国であるため「大豆はアメリカ育ち」と思っている方も多いのですが、ルーツは中国をはじめとする東アジアという説が一般的。日本でも大宝律令に大豆を原料とする「醤(ひしお)」などの記録があります。

大豆がアメリカに伝わったのにはいくつかのルートがありますが、1851年にアメリカ商船に救助された日本の難破船から伝わったものもあります。大豆は英語で「Soybean」ですが、この「Soy」の語源は「Shoyu」。大豆から作られた日本の「醤油」が英語の「Soybean」に深くかかわっています。名前そのものにも日本の醤油の香りが漂うようで、面白いものですね。

さまざまな素材をブレンドしている配合飼料ですが、その一つひとつが物語を持っています。次回「よい餌」後編では、いよいよ“よい餌とは何か”を考えていきます。お楽しみに!

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