教えて!トリ博士

第4回 世界の潮流は
“アニマル
ウェルフェア”
〈歴史編〉

教えて!トリ博士
[第4回]世界の潮流は“アニマルウェルフェア”〈歴史編〉

「アニマルウェルフェア」

いう言葉をご存じですか。

一般には「動物福祉」と訳されており

農林水産省も推奨している考え方ですが

日本はまだまだ発展途上なのです。

アニマルウェルフェアの
5つの自由

「アニマルウェルフェア(Animal Welfare)」は、欧州で定着し、国際的にも知られた概念です。日本が加盟している国際獣疫事務局(OIE)のガイドラインでは、「5つの自由」が定義されています。

農林水産省は、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めています。

アニマルウェルフェアが
意識されたのはいつごろ?

意外なほど古くから意識されていました。世界で最初の動物福祉協会活動は、1824年イギリスで起こったのです。日本は江戸時代後期、「異国船打払令(1825年)」を実行したころですね。1840年にヴィクトリア女王の認可を得、「Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals (RSPCA) 」という名称で世界に知られており、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカにも影響を与えています。

アニマルウェルフェア(以下AW)の「5つの自由」も古く、1922年、日本の大正11年にイギリスの畜産動物ウェルフェア専門委員会が提案し、のちにOIEが指針としました。

食品は家庭での手作りから工場の処理へ、家畜の飼育は農家から工業的大群飼育へと移行していく時代に、AWが大きく取り上げられるようになってきました。「家畜を食用にすることは罪ではないが、生きている限りは大切に」というキリスト教の宗教観もあり、現代におよぶまでこの概念は欧米で発展し、例えばオリンピックアスリートがAWを求めるなど、世界の潮流となっています。

アニマルウェルフェアが
意識されたのはいつごろ?

日本の動物福祉協会は、2008年に「アニマルレフュージ関西」がRSPCAの協会員として認定されたのが最初、つい最近と言っていいでしょう。

日本では、古代から「肉食禁止令」があり、仏教により「殺生をしてはならない」という考え方があったので肉食は一般的ではなく、畜産は明治になってから。動物にとって過酷と見られるほどの畜産業が育っておらず、AWの意識は芽生えませんでした。

現代ようやくAWはしばしば登場する言葉となりましたが、例えば採卵用の養鶏は主にバタリーケージを用いるなど、AWが浸透しているとはいえないのが現状です。また、土地や飼料、設備費が高い日本でAWを実行しようとするとコスト高となること、鳥インフルエンザの問題から欧州のような放し飼いはできないことなど、日本ならではの事情もあります。

その中でも、出来る限りAWを実行していくのが、作り手でもある「日本赤鶏協会」の考え方です。「5つの自由」の①から④は、実行することで生産性も上がるので比較的取り組むところが多いのですが、一番難しいのが「⑤通常の行動様式を発現する自由」。

ブロイラーは効率を重視して育種改良を重ねたために、鶏本来の自然な成長を超える増体性能を持ち、その目的ゆえに高い密度で飼育されがちです。それに対して赤鶏はゆっくり育つスロー・グロウス。自然に近い成長を助けるために、1㎡あたりの飼育羽数を抑えゆったりとしたスペースでのびのび育てます。また、そのことで「通常の行動様式を発現する自由」を得ると考えています。

日本赤鶏協会は、赤鶏のスロー・グロウスの血統を尊重し、可能な限りAWを実行します。

次回は⇒〈アニマルウェルフェア:現代編

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