教えて!トリ博士

第2回 日本での
鶏の区分

教えて!トリ博士
[第2回]日本での鶏の区分

銘柄牛、銘柄豚があるように
銘柄鶏もありますよね。でも地鶏もある…。
そして牛豚と違うのは
「卵も食べる」ということ。
「鶏肉」としては同じでも、
視点によりさまざまな種類があります
何が違うのか、
日本での鶏の区分を考えてみましょう。

用途による区分、
卵用鶏と肉用鶏

もともと、鶏は食用ではありませんでした。刻を告げるため、闘鶏用として、そしてペットとしても飼育されていました。食用となったのは江戸時代、また鶏肉とともに鶏卵が食べられるようになったのは明治時代と言われています。

みなさんには「卵を産まなくなった鶏を、お肉として食べる」というイメージがあるのではないでしょうか。日本でもずっと「卵肉兼用種」が飼育されてきました。しかし第二次世界大戦後世界の畜産業が発展し、それぞれの生産能力に優れた「卵用種」「肉用種」に品種改良され、日本には1960年以降進出してきました。現在でも卵肉兼用種は存在しますが、例えば有名な名古屋コーチンは採卵用と鶏肉用で飼育が分かれます。

鶏は、そのほとんどがその能力に特化した「卵用鶏」「肉用鶏」に分かれています。
赤鶏は、お肉の質に優れた肉用鶏です。

肉用鶏の区分、ブロイラー、
地鶏、銘柄鶏

肉用鶏の生産能力とは、早く大きくなることです。その分飼料も人件費など諸費用も少なくてすみ、安価で流通できます。その目的で開発されたのがブロイラーで、高度経済成長期に大幅に増えた鶏肉の需要に貢献しました。

1990年当時、肉用鶏の主な分類は「ブロイラー」と「在来地鶏」でした。当時ブロイラーは一部消費者から「味がない、パサつく」と飽きられ、在来地鶏は生産量が少なく高価格、また歯ごたえが当時の人々には「硬い」と思われていました。バブル期、求められていたのはグルメ鶏。「もっと美味しい鶏を」と各地で開発が進み、畜産先進国のフランスに学んで「赤鶏系グルメ鶏」の誕生へとつながりました。

しかしバブルが崩壊すると、グルメ志向を満たしながらも価格がおさえられた鶏肉が求められるようになり、ブロイラー系を用いながら飼育方法に工夫を加えた「銘柄鶏」が開発されました。

一方「地鶏」と名乗る鶏肉商品が多くなったため、これを明瞭にするために1999年農林水産省が「JAS法」で基準を設けました。在来種の血統が50%以上、飼育80日以上(現在は75日以上)などの条件を満たし登録されたものが「地鶏」と呼ばれます。

現在の肉用鶏の区分は、大きく分けて「ブロイラー」「銘柄鶏(ブロイラー系と赤鶏系)」「地鶏」の3種類です。赤鶏は、赤鶏系銘柄鶏です。

育種の区分、ファスト・グロウスと
スロー・グロウス

生産性を追求して生まれたのがブロイラーです。50日以下で3kgになるまで育種改良は進んできました。早く大きくなることを「ファスト・グロウス」といいます。ブロイラーは短期間に大量生産できるよう育種改良を行った合成種になります。
一方、現代人のし好と生産性の調和を求めて育種されたのが銘柄鶏で、特にゆっくり自然に大きくなる赤鶏系は「スロー・グロウス」です。60~80日で2.8kg程度になります。

また、生産コストはかかりますが、伝統の味の維持を主眼として育種され、120日以上の飼育を要する在来地鶏もあります(JAS法の地鶏の定義は75日以上)。

現代は、グルメ時代を経て地球環境など持続可能な生産を根底とした動物福祉(アニマルウェルフェア)が志向される時代です。自然にゆっくり育つスロー・グロウスは、動物福祉の考えに合致します。

赤鶏は、卵肉兼用種あるいは卵用種をベースに血統的にも肉質に特化したスロー・グロウス鶏種となります。

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